FC2 Blog Ranking 前川弁護士blog 2010年09月
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 前川 直輝

Author: 前川 直輝
最終学歴 京都大学法学部
司法修習 54期
カリフォルニア州弁護士
Maekawa国際法律事務所・代表弁護士
https://maelaw.jp/

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証人尋問
昨晩はすごい雨でしたね。
たまには降ってもらわないと潤わないですし、大阪は午前中には雨が上がっていたのでちょうどよかったかもしれません。

さて、私が弁護士になりたいなと思った理由の一つに、尋問の場面の緊張感、やり甲斐があります。
学生のころから、弁護士なんていう職業もよく分からないけれど、アメリカやイギリスの訴訟に関する映画やドラマが好きで見ていました。古くはthe Firmのトム・クルーズにあこがれたし、「評決」の最終弁論は泣きそうになりました。中でも、反対尋問で、尋問対象者から真実を引き出すということについては、この上ない喜びを感じます。

この間も受任事件の裁判で、証人尋問をしました。
自分の依頼者とは対立する側の関係者の、反対尋問でした。
決して複雑な事実関係があるわけではないですが、尋問に至るまでの訴訟経過は決して有利とはいえない状況でしたし、尋問の結果次第で結論が左右するという見立てもあったので、自分なりに周到な準備をして臨みました。
依頼していただいている会社の担当者も傍聴されたのですが、「久しぶりに痛快な尋問を拝見しました」と喜んでいただけたようです。嬉しいですね。

尋問技術について講釈をたれる力も余裕もありませんが、これまで刑事裁判や弁護団事件などに関わる中で、ポイントとなることは会得できつつあるのではないかと思います。
反対尋問のキモは、「矛盾」であり、それは客観的な証拠(ほとんどは書類の記載内容)との食い違い、また自分の言い分との食い違いを指摘することで、その人の供述の信用性を低下させることにあります。

尋問で成功するためには、
①尋問の目標=結論として導き出したい事実、証言を具体的に設定すること
②設定した目標に向かうために、証言以外の客観的な証拠関係を具に検討すること
③後々必要になる前提事実を洗い出して、警戒されないうちに確認しておく等、質問の順番を工夫すること
④質問の内容は、反対尋問であれば誘導尋問で聞いていくこと
⑤有利な証言が出たら、深追いをしないこと(せっかくよい証言があったのに、「ということは・・・ということですね。」と質問してしまうと、再考されたり、言い換えられたりしてしまう)
⑥質疑の最中、尋問対象者の一挙一動を注視し、質問の仕方を変えること(誰でも、やばいなぁと思ったら、態度に出るものです。おでこにジンワリ汗がにじんだり、手元のハンカチを握りしめたりしたのを見て気づくこともあります)
⑦質疑の最中の裁判官の態度を確認すること(良い尋問のときは、前のめりになって、メモをしっかりとってくれます)
などが大事だと思われます。

残念なことに、少なくない尋問で、準備段階の①や②すら整っていないことが多く、そうすると対立当事者の側の弁護士だといっても、悲しくなります。
それなりに準備をしていても、①の観点が全くなければ、場当たり的に質問したり、沈黙や言いよどんだりしたときに大声で威圧するような稚拙な尋問に終始したりします。
また、標準のレベルの尋問であったとしても、⑥や⑦といった現場のリアルな状況まで気を配って、尋問の成果に反映させるということは、経験もそうですが、意識がなされていないと、できるものではありません。
多くの場合、予定した尋問事項を確認していき、何か言いよどんだら突っ込んでいくという手法のようです。
それに、これまた多くの場合、言葉が聞き取りにくかったり、声が小さかったり、早口過ぎて、やりとりにならないこともあります。弁護士も緊張するからでしょうけれど、もったいないですよね。

確かに、反対尋問は、基本的に有利な証言は期待できませんから、成功するなんて思ったらだめで、失敗して元々だと昔から教えられてきましたし、現在もそう思います。
また、何か決定的な証拠があるなら、尋問にまでならないでしょうし、そういう証拠が自分の手元にだけあるというのも特殊な状況でなかなかあるものではありませんから、完全に追いつめることができないのが当然です。

ただし、依頼者がウソを述べているのでなければ、言い分の違う証言には、必ずほころびがあります。
それは準備をすればするほど、見えてくるものです。
今回は当然他の当事者に弁護士さんがついていましたが、尋問の準備をされている様子は十分うかがえましたが、例えば質問の仕方一つとっても、専門用語が多く、一般人である尋問対象者が首をかしげることがありましたし、尋問の前後の対象者の反応、小声で何かを言ったその態度などを取り上げることなく、強引に自分の方向に誘導していく傾向が強く、証言内容が必ずしも有利になるようには思われませんでした。
私は、その尋問対象者に対する反対尋問としては、予定していた目標の100%を達成できたといってよく、その後の再主尋問などでも変わることがなかったので、上首尾だったように思います。
その点を依頼者も理解してくださったようでした。
うまくいかないこともありますけれど、私自身にとって、弁護士の仕事で一番気持ちよいのはいつかと尋ねられれば、反対尋問が成功したときを答えると思います。

いつもうまくいくものではないですし、多くの裁判が、おそらく皆さんが思っているよりも、尋問前に和解で終結するので、こんな機会はそう多くありません。
ただ、尋問については、最近の裁判では比較的上手く言っていて、それは事案に恵まれている感もありますが、自分なりの技量も多少は向上しているのかもしれないと思います。
それでも反省点もあります。たまに質問が長すぎることがあるのが問題だなと自覚しています。
後日尋問の調書を見て、改善を図っていきたいと思います。

そういえば、「異議あり」と久しぶりに叫びました。
一瞬現場が凍り付きました。
民事事件の尋問では、それほど多く異議が出ない傾向にあるのと、現場の状況が何となくゆったりとしていたのも理由だと思います。
結果、裁判官を通じて質問内容を修正できたので、異議も奏功したと思われます。
適切な異議を出し、あるいは相手が墓穴を掘っているときはあえて異議を出さないで流す、といったことも、立派な尋問技術の一つです。

容姿はともかく、こういう姿を見てくれれば、多少妻も見直してくれるだろうにと思うのですが、どうでしょうか。
尋問がうまくいった日には、内容は言わないですが帰ってから「こんなだったんだよ」と言うのですが、「ふーん。それで?」と言われてしまいます。仕事を離れると、途端に口が下手になるようです。
一度くらい傍聴に来てもらって、株を上げたいものだと思う、今日この頃です。