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 前川 直輝

Author: 前川 直輝
最終学歴 京都大学法学部
司法修習 54期
カリフォルニア州弁護士
Maekawa国際法律事務所・代表弁護士
https://maelaw.jp/

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勝ったとはいえ・・・大阪地裁襲撃事件・国家賠償控訴審判決
今日は清々しい晴れの日でした。
午後、大阪高裁で、地裁所長襲撃事件の冤罪事件に関する国家賠償訴訟の控訴審判決がありました。
若干金額が変わった原告もいますが、ほぼ原審で大阪府警の違法捜査を認定した判決を維持したものでした。
認容額は5名あわせて1500万円ほどで、これに先立って最低限の刑事補償、少年補償が別途支払われています。

事件の詳細は既に何どもブログで引用していますので、そちらをご参照ください。
早くも報道がされていますね。
(asahi.comより)
大阪府警の暴行、高裁も認定 地裁所長襲撃の取り調べ
 

大阪市住吉区で2004年、当時の大阪地裁所長が襲われた強盗致傷事件で、無罪判決や少年審判の不処分が確定するなどした元少年ら5人が、国(検察)と大阪府(府警)、大阪市(児童相談所)に計約6千万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、大阪高裁であった。

 坂本倫城(みちき)裁判長は1月の一審・大阪地裁判決と同様に、府警の取り調べで暴行や自白の強要・誘導があったと認定。身柄が拘束された期間に応じて2人の慰謝料額を変更し、改めて府に計約1450万円の賠償を命じた。5人は「検察は控訴するなどして決着を長引かせた」「児相は警察官の違法捜査を黙認した」と主張していたが、検察と児相の責任は認めなかった。

 5人は04年2月16日夜、大阪市住吉区の路上で、帰宅途中の地裁所長(69)を襲って腰骨骨折の重傷を負わせて6万3千円を奪ったとして逮捕、起訴、家裁送致されるなどした。だが、14歳未満で刑事処分を受けなかった1人を除く4人に対しては、08年9月までに無罪判決(2人)や無罪にあたる保護処分の取り消し(1人)、不処分(1人)が確定した。


代理人弁護士としては、高等裁判所というのは怖いところで、何も言わず突然結論を変更したりする場合もあるので、概ね原審が維持されたことには胸をなでおろす気持ちもあります。
しかし、両手を挙げて喜ぶような内容ではありません。
判決直後、司法記者クラブで会見をしましたが、当事者は一様に暗い顔で、誰も喜んでいませんでした。
一人平均で300万円ほどという金額が認められていて、今どきすごいじゃないか、と思われるかもしれません。
彼らはどうして客観的にはそれなりの勝訴判決なのに、喜べないのでしょうか。

この事件は、発生したのが平成16年2月、少年が補導・逮捕され、成人が逮捕されていったのが同じ年の5月、6月ころです。
既に7年が経過しています。
当時中学生は今成人し、仕事に就いて、自分で部屋を借りて自活しています。結婚して子供をもうけた元少年もいます。
少年審判、刑事公判で無罪だと言われて、名誉も回復され、これだけメディアに取り上げられ、補償得られたんだからいいじゃないか、という感想もあるかもしれません。
しかし、7年以上の間、身に覚えのない犯罪の嫌疑、それも当時大阪地裁所長の裁判官に暴行をしてお金をとったという疑いをかけられたことで、刑事・民事の裁判を続けさせられるということは、どれだけの負担でしょうか。
その間、有罪と言われたり、無罪と言われたり、差し戻されたり、またひっくり返されたり。
一喜一憂しながら、大人とすら満足に話ができない中、弁護士などという人物と協力してことを勧めるというのは、自分の若いころに置き換えると、とんでもなく不安なこと、辛いことだと思います。
少年の場合は10代後半のまさにみんなが様々な経験をし、ふれあいを重ねる貴重な時期を、成人でも20代の元気で前向きであるはずの時期を、実質的には失わされているのです。
賠償訴訟で一部認められたからといって、十分回復できるなんて、ありえない、そのことを誰よりも痛感しているから、徒労感に襲われ、喜べないでいるのだと思います。

これらはすべて裁判制度によって生じたもので、いずれも警察官からの立て続けの暴力や執拗な誘導、威圧的な態度ゆえにしてしまった自白にはじまっています。本人たちに落ち度はありません。
それなのに、費用補償を求めるにもこちらから申立てなければならないし、不足があると考えるなら再び弁護士に依頼して国や都道府県などを相手取って訴訟を起こさないといけません。
しかも、ひどいことに、賠償訴訟で呼び出した元取調べ担当の警察官は、皆口をそろえて「今でもこいつらがやっていると思ってます」と平気で言います。
お金より何より、これらの訴訟経過での心無い発言や、公務員として従わなければならない法令や司法判断への敬意の欠落によって、彼らはとても深い闇に落とされてきました。
自分で頑張って手続きをしてくれたら金を払うよ、ただ訴訟だから言うことは言わせてもらうよ、というのでは、いったいどこまでいったら自分たちのことを無罪だと認めてもらえるのだろうかと不安定になるのは、想像に難くありません。

失われた人生の時間は取り返しがつきません。
それを補うのにたかだか数百万円、1000万円では、実際の損失を補うのにも遠く及びません。
まして、それくらいの金額でお茶を濁すというのでは、警察官・検察官の意識としては、運が悪かっただけだ、お前たちはきちんと仕事をした、ということになりやしないでしょうか。
そして、裁判制度を使うまでもなく、自発的に冤罪の原因を追及し、責任ある者は内部的にも処分をするのが当然ではないでしょうか。
このままお金を払い、警察内部では未だに署長賞が授与されただけで適切な措置が講じられていないのでは、大阪府警は何度でもあるし、検事もろくにチェックしないのではないでしょうか。

私は常常、我が国の冤罪被害者に対する補償の薄さに、不満を抱いています。
冤罪被害を被った人は、国・地方自治体にその責任があるのに、一私人としてあらゆる手続に自発的に関与しなければならないというのでは制度的におかしいと思うのです。
冤罪被害者には回復不可能な損害が生じます。そのことを広く理解し、人生における補償を十分に尽くしてあげても、やりすぎということはないと思います。

本件では、単に取調べで威圧的だった、というのにとどまらず、当時の薄弱な根拠で逮捕状を請求した行為、検察官に事件を送致した行為が違法だと断定されています。
その重大性を、大阪府警は自覚すべきです。そうでない限り、今までと同じように、彼らは同じ過ちを繰り返すに違いありません。
そして何より、内心がどうあれ、司法判断が確定した以上、その手続きの過程で耐え難い苦痛を与えたことに思いを致し、少しでいいから、頭を下げて謝罪してあげてもらいたいです。
本人たちがもっとも望んでいることは、誠実な態度です。

まだ大阪府がどのような対応をするか、上告するのかは予断を許しません。
支援者の皆さんとも協力して、早期解決に向けて努力していきたいと思います。
当たり前のことが当たり前に行われるよう、微力ながら関心を払い、戦い続けたいと思います。
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