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 前川 直輝

Author: 前川 直輝
最終学歴 京都大学法学部
司法修習 54期
カリフォルニア州弁護士
Maekawa国際法律事務所・代表弁護士
https://maelaw.jp/

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コップの中の嵐~巨人軍の清武元代表に勝ち目があるか?
先日記事にした、菅野選手は、結局浪人することに決めたそうですね。
別に個人の判断ですから結論はどうでもいいですが、ファイターズが言う「まだ本人から連絡がない」というのが真実なら、社会人としてどうなの?と思います。相手のある話で、しかもその世界で今後もやっていこうというのなら、まずお断りの連絡を直接入れるのが筋でしょう。大学野球チームの監督が出てきたり、親族がちゃちゃを入れる前に、成人している社会人なのですから礼を尽くすべきだと思うのですが、どうでしょうか。

さて、野球つながりで、読売ジャイアンツの清武元代表と、読売新聞の渡邉恒雄氏の対立に注目が集まっています。
素晴らしい日本シリーズの最中に、こんなつまらない話で野球会を騒がす球団というのは一体何様だ、と一ファンとして腹立たしい気持ちです。
しかし、弁護士として見ると、この問題、そんなに難しいことか、物珍しく取り上げるほどのことか、と思います。

野球の球団も、所詮は株式会社です。
株式会社は、出資者が株主となって会社を保有しつつ、委任を受けた取締役が、通常は複数の中から代表取締役を選任する等して、経営に専心するという法人です。
清武氏は、元代表取締役であり、渡邉氏は取締役会長で、おそらく表示からすれば代表権がないということなのでしょう。

清武氏の主張によれば、球団のコーチ人事に、渡邉氏が不当に干渉した、ということのようです。
真偽のほどはわかりませんが、平たくいえば、株式会社内の常勤・非常勤の従業員の採否、契約関係処理について、取締役会長が介入したということなのでしょう。

この問題は、落ち着いて整理するべきでしょう。

1.コーチ人事の介入ということの法的意味
内部規程の詳細はわかりませんが、コーチといっても、球団が雇用なり委任なり請負で契約を締結する一個人です。特定人と契約を締結するかどうかは、スポーツですから監督をはじめとする現場スタッフの意見も聞く必要はありますが、最終的には株式会社たる球団において意思決定がなされるべきものです。
そして、意思決定をする方法は、取締役会に議事をはかり、定款そのほかで定められたルールにしたがって決議をするという方法によります。
清武氏がいくら代表権者だったからといって一人で決められないし、逆に渡邉氏が何か言ったからといって従う必要もない。どうするべきかについて、取締役会で議論し結論を出せば済むことです。
プロ野球チームの人事については、ファンも関心があるので報道の対象になることは理解できますが、その過程がどうのこうのというのは、所詮会社内における人事の意思決定に過ぎません。

2.渡邉氏の介入の意味
上記のとおりですから、渡邉氏は、取締役として、取締役会で意見を述べ議論に参加する資格はあります。
もちろん会長職というのは現場から離れるというのが一般的な認識ですが、取締役である以上、個別の委任契約で制限がされていなければ、基本的には会社運営について意見を言える立場にあります。
ですから、人物の好き嫌いや、年齢、野球経験の有無などに関わらず、意見を言うことそのものを問題だという清武元代表の立論には、疑問符が付きます。
取締役どうし意見が対立することは通常あってよいことで、それは取締役会内で議論を重ね、最終的には多数決等所定の手続で結論を出せば良いことでしょう。

法的にいえば、不当な介入という評価自体がナンセンスで、おそらく渡邉氏が代表権がないにも関わらず発言権が事実上大きいので、パワーバランスとして不利な清武氏が、わざわざ文科省という場所を選んでメディアに暴露し、世論を見方に付けようと思ったというところでしょう。
もし渡邉氏の意見が不適切で、球団運営に支障があるというのなら、取締役会や株主総会を通じて取締役から解任させればいいことです。それができないのなら、議論を尽くすべきことです。

プロ野球チーム固有の問題として、ジェネラルマネージャー制度を設け、全権を委任するという扱いがありえます。この場合は少々赴きが違うかもしれません。ただ、それでも、GMの言動に会社や他の取締役が何も意見がいえないというものではないでしょう。私も詳しい契約関係や条件を分からないで意見している限界がありますが、少なくとも社内で協議すべきものだということは間違いないと思います。

3.清武氏の会見の問題点
清武氏は、代表取締役として上記のような渡邉氏の人事介入の事実関係をメディアを通じて公にし、批判をしました。ところが、球団側はそれを聞いていない、独断専行だと批判します。

取締役は、会社との間で委任契約を締結しています。契約年数があり、委任される事務があり、職務を執行するわけです。代表取締役は代表権限がありますから、契約書にハンコをつきますし、交渉に顔を出して発言すれば会社の正式な意見表明と評価されます。
しかし、何でも一人で決められるわけではなく、単に所掌事務の執行権限があるというだけで、その事務の中身については取締役会で議論を経なければなりません。
会社内部の意思決定は、営利企業でありノウハウ、人事、そのほか基本的に公にすべきでない情報ですから、その過程も含めて、取締役には秘密を保持すべき義務があります。
情報を開示するかどうかも、普通は決議にはからねばならない事柄です。

清武氏が会見で会社内部の意思決定過程を公にしたことは、会社が承知していないという以上、取締役としての守秘義務に違反することになります。また意思決定のプロセスにおいて、取締役会を無視した、ということで、取締役として業務を忠実に行う義務にも違反していると評価されるのではないでしょうか。
もちろん秘密保持義務には例外があり、例えば会社が犯罪に加担していたりその危険があるということで内部通報をするような場合や、企業合併交渉で相手方に情報として開示するケースでは、適法とされます。
しかし、今回のケースで、守秘義務違反を適法にするような事情は、今のところ見当たりません。

4.清武氏解任の正当性
取締役と会社の関係は委任関係にありますから、基本的にはいつでも契約解除をされる可能性があります。
解任のプロセスについては各社内で通常は規程があり、株主総会の多数決で決定されます。
今回の解任について所定の手続きを踏んでいることは間違いありませんから、その株主総会決議が適法であるかどうかが問題になるでしょう。
清武氏側としては、決議が無効・取消されるべきだとの訴えを起こすこと、場合によってはその前提として自分が未だ代表取締役の地位にあり、報酬を受領する立場にあるという地位保全の申立てをすることもできるでしょう。

ただ、株主総会決議の効力が裁判所によって変更されるというのは、そうある話ではありません。
ハードルは高いです。決議に定款違反その他重大な違反・不公正がないと認められません。
むしろ、今回は、守秘義務違反や取締役としての業務執行の不適切等、普通の会社であれば解任される可能性がある事情ばかりです。法的に清武氏は不利だと思います。

他に、解任はやむを得ないが、正当な理由なく任期途中に解任されたとして損害賠償請求を行うことも考えられますが、解任に理由があると評価される可能性が、現時点では高いと思います。

5.今後の展開、清武氏の言動について

清武氏は現在は、解任を争うとはいえ、ただの人です。
球団とは関係がないから、なんでも喋られる、というようなことを言っていました。
ただ、在任時の体験を不用意に話すことは、会社や個人の信用を毀損する可能性が高く、それが事実であろうがなかろうが、法令に触れる可能性があります。
特に彼がしゃべろう、とすることは、秘中の秘の情報でしょうから、それが公になることで会社としての損害は少なくないでしょう。
既に弁護士に相談しているということですから、どこまで話してよいか等はアドバイスは受けているでしょうが、慎重でなければなりません。


さて、色々こむずかしいことを言いましたが、現実は法律以外の力が働きます。
清武氏が知っている情報の中には、本当に問題がある、球団のコンプライアンスにかかわる重大な事実関係が含まれている可能性があります。
特に渡邉氏は、以前大変問題になったいわゆる大学生等への裏金問題で引責辞任した経過があります。
当時は特定人の事実関係だけ報道されましたが、歴史的にいえば大変長い経過を経ており、大相撲の八百長問題と同じで、本当に当時報道されただけかなのかは甚だ疑問です。
その辺の清武氏が知っている事実で、本当に公にされては困るものというのが、会社、渡邉氏側にあるはずです。
交渉ごとは法律の建前以外の、そういった手駒の多さ、強さが結論に影響するのも事実です。
そして、結局お互い喧嘩をした上で、何だかよく分からない和解をし、真相は薮の中、という話になりやしないか、と思います。

読売巨人軍があまり好きでないという色めがねはあるものの、現在のプロスポーツチームというのは、もはや所有する特定の会社の意向がどうの、という時代ではなく、地域に根ざしたものでなければならないと思います。
資金を拠出できる会社があってこそのプロだとは思いますが、チームの基礎は、フランチャイズを置く地域の人たちの信頼、期待、憧れなのではないでしょうか。
法律論は別として、未だに渡邉氏がどうの、伝統あるどこそこがどうの、なんて話をしていることが時代錯誤だという思いがあります。

法廷闘争、やるならご勝手にという感じですが、メディアももっと他のことを報道しなさいよ、と思います。
欧州諸国の危機は大変な情勢で、これを正確に理解するには相当報道に時間をとらないといけません。
国内でも原発処理や電力問題、外交上はTPP等、取り上げるべきものはいくらでもあります。
こんな話、所詮は小さな、小さなコップの中の嵐に過ぎないのですから。。。

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