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Author: 前川 直輝
最終学歴 京都大学法学部 司法修習 54期 カリフォルニア州弁護士 Maekawa国際法律事務所・代表弁護士 https://maelaw.jp/
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カリフォルニア滞在記~米国司法試験・試験会場下見とMPRE |
ずいぶん更新の時間があき、各方面から大丈夫か、元気にしているかとご連絡をいただき、恐縮しております。 帰国後、休みはほとんどなく、おかげさまで仕事をバタバタとする毎日です。元気でやっておりますのでご心配要りません。
さて、せっかくですので、簡単な旅行記を残しておきます。 私は英語を使うので海外取引ですとか、国際契約書・英文契約書のチェックを業務としてしており、日本におられる外国人の方のサポートもしております。 ただ、契約をするのに日本法が準拠法だということが少ないので、日本のような制定法がきちんとある国でないコモンローの体系の法律を勉強したいと思うようになったのと、漫然と英語やっていても仕事で使えるレベルで有り続けるには何か目標が必要だということで、方法論を模索していました。 アメリカ合衆国のカリフォルニア州は、外国の法律資格者であれば、現地のロースクールを卒業しなくても、いわば飛び込みで司法試験を受験し合格すれば登録ができるということを知って、昨年末からアビタスという学校で受験対策をしながら勉強をしています。
本番の司法試験以外に、MPREといって、択一式の全州統一倫理試験にも合格する必要があります。 司法試験は7月と2月の年2回ですが、MPREは3回あって、日本に近いところではサイパンやグアムでも受験ができます。しかし、自分が通っている英会話スクールの先生(なんとカリフォルニア州出身だったりします)に相談したら、本番の試験を受けるだけでも大変なのに、交通機関の乗り継ぎとか、試験会場、ホテルや食事など分からないことだらけでは不利だろう、どうせ休みをとって受験するなら、本番の会場に近いところで受けてみたら?とアドバイスをしてくれました。 なるほど、と腑に落ちたので、お金も時間もかかりましたが、カリフォルニア州・オークランドを訪問しました。
ネット上でも米国司法試験の情報はわりとあるのですが、ほとんどすべて、現地のロースクールに行ったという人が書いておられます。実際の旅程や宿泊場所、試験会場の環境についての情報が少ないので、自分の備忘もかねて記すことにします。
1.交通経路 マイレージの関係で、大阪伊丹から、東京羽田経由でサンフランシスコ国際空港に向かいました。 羽田を深夜0時過ぎ発ですが、時差が8月はサマータイムの関係でー16時間です。 現地時間17時過ぎに到着ですから、時差ぼけを考慮すれば機内ではほとんど寝ないという作戦で行きました。 これは奏功したようで、自分は元々時差ぼけには強いのですが(よく眠れる)、ずいぶんアジャストが早まったと思います。
日本人の受験生は、本番の司法試験ではラップトップコンピュータを使って受験するよう推奨されており、ラップトップのオプションが選択でき、かつホテルと隣接している会場がオークランドかロサンゼルスだということで、オークランドを前提に、MPREの会場もその近くで選びました。
空港到着後、オークランドのホテルまではBART(バート)という列車で移動できます。
 車内は日本と変わらず普通の電車。でも車椅子スペースが広かったり、優先座席が法律の根拠があるものだという記載があったり、自転車通勤の人向けに自転車を置く場所があったり、面白かったです。
国際空港からだいたい40分程度で、12th St. Oakland City Centerという駅に到着します。 既に日が沈み、方角も分からず難儀しましたが、宿泊場所のMarriott Oakland City Centerはバートの駅の出口からわずかワンブロック南の角にありました。
2.マリオット・オークランド・シティセンターホテル
 初心者向けの注意としては、サンフランシスコ周辺でマリオットといえば他のホテルが出てきます。 このオークランドという街は観光エリアではないので、ガイドブックにもほとんど載っていません。 違う場所を予約したりしないよう注意が必要だと思います。 マリオットグループは他の国でも宿泊したことがありますが、綺麗な受付で、一定水準以上のサービスが期待できますし、実際そのとおりでした。
ホテルが司法試験本番の会場であるOakland Convention Centerと隣接している、とあったので、どこにあるのやらと思ったら、何のことはない、そのままホテルから繋がって行けるのでした。 このホテルの利用目的としては、主として会議、セミナーへの参加がメインのようで、夏の時期というのもあるのかもしれませんが、観光客は少なかったです。特に、法曹関係者の会議も多い場所のようで、私が滞在していたときも、弁護士会が主催する相続法、移民法、倒産法のワークショップはセミナーが実施されていました(なので会場写真はありません)。
おそらくロスもそうだと思いますが、ラップトップを持ち込んで使えるようなホテルで、大きなコンベンションセンターに接続しているというと、それなりのグレードのホテルで宿泊料金は安くありません。しかし、会場に雨にぬれずに行けますし、快適さはなかなか代え難いメリットではないかと思われます。 本番の試験は午前午後、昼休みを挟んで丸一日が3日連続します。体力気力ともに疲れるだろうと思います。 それに試験会場に持ち込める物が大幅に制限されますから、会場に接続し、部屋に貴重品含めて置いて置ける、場合によっては休みに帰られるのは、大変なメリットだと感じました。
予算を削りたい、ということでしたら、会場から筋向かいのCourtyard Oakland Downtownでも徒歩30秒くらいで近いと思います。宿泊料も60%程度ですね。
さて、ホテルの部屋はダブルベッドがドーンとあって、小奇麗な感じです。
 木のデスク、椅子があり、タンスもクロゼットもあります。アイロンも置いてありました。 風呂とトイレは一緒ですが綺麗で、一応バスタブもあり、到着当日は足も疲れたのでお湯をためてゆっくりしました。
部屋によって違うかもしれませんが、無線LANは少なくとも使用可ですが有料(一日800円くらい)、有線LANもケーブルを借りられるとのことです。 テレビはありますが、観光地ではなくNHK含め日本語のチャンネルはありません(お金を出したらどうかは知りませんが。。。) ちょうどオリンピック後半で、レスリングなどで金メダルが相次いでいたタイミングで、男女サッカーも決勝・三位決定戦。すべて見逃し、アメリカ選手の活躍ばかりが目についた夏でした。。。
なお、全室禁煙と表示があり、喫煙スペースは確かホテルの館外です。非喫煙者には快適な場所でした。
3.周辺環境及び食事
私は実は詳しく知りませんでしたが、OAKLANDの犯罪発生率はわりと高いという情報があります。 City Hallや企業のオフィスがあるなど、通勤で来る人は多かったですが、夜になれば人が少なく、なんとも怪しげな人がチラホラいたりもします。ただ、こればっかりは自分で気をつけるしかありませんし、不要不急の夜間外出は避けるよう、昼間に用事を済ましておくことでしょうね。 ホテルの場所のすぐ東側がチャイナタウンで、中華系の人が圧倒的に多いです。 中華料理が食べたければ、お腹がはちきれるほど食べられますが、試験の時期には結構もたれると思うので気を付けたほうがよさそうです。
これまたネット情報等で現地の受験経験のある人のブログを読んでいると、アドバイスとしては昼ご飯はちゃんと調達しておくように、というのがあります。 まずホテルのレストランはありますが、高いのと、落ち着かないかもしれないのと、あまり席数が多くはないので、あてにしないほうがよさそうです。 周辺には、ファストフードでよければ、スターバックス、バーガーキング、サブウェイなど徒歩5分圏内にあります。注意を要するのは、朝は5時、6時から空いていますが、夜は7時には締まってしまうということですかね。夜中に買出しに、というわけにはいきません。 夜はインド、ベトナムなど各国の料理が楽しめます。 日本料理や、寿司などありましたが、私は外国に行って日本料理だけには手を伸ばさないというポリシーなので、よくわかりませんでした(あまり流行っていなさそうでしたが。。。)。
いわゆるコンビニのようなものは、私が見る限りは見当たらなかったですが、普通の街のスーパーはいくつかあって、そこで買い込むのも一つでしょう。筆記具などもホテルから2ブロック北側のブロードウェイ沿いのこじんまりしたスーパーで購入することができました。
4.Cal Bar受験でOaklandを選択される場合の注意点 ロスに行ったわけではないですが、会場隣接のハイグレードホテルという点では変わりはあまりないでしょうかね。基本的にはお薦めですが、いくつか旅程を含めて注意したほうがよい点を箇条書きしておきます。
・アビタスも言っていますが、少なくとも試験まで2日は準備であけておきたいです。 確かにお休みを取らないといけないので大変なのですが、前日に到着してバタバタする中、翌日朝一で試験というのはちょっと厳しいと思います。 私は下見をしたので楽な気分でいますが、多くの場合は初めて訪問する場所になるでしょうから、場所に慣れるのと、時差ぼけ解消のため、できれば2日、少なくとも丸1日は予備で前乗りしたいです。
・ランチは早起きして周辺で買うか、保存のきくものをスーパーで買い込んでおきましょう。 あのコンベンションセンターに人が集まると思うと、昼休み中が騒然となり、込み合う状況は想像がつきます。
・コンピュータ受験をするので、接続環境は複数あったほうが安心です。レンタルのルーターを持っていきましたが、案外役に立ちました。本試験のエッセーなどは、所定の時刻までに自力でアップロードが必要だとされています。ホテルの有料回線なら安心はできそうですが、不具合が出ても慌てないで済むように予備の対応はしておくのがよさそうです。 いざとなればスターバックスで無料の無線LANが使えます(設定も簡単)から、走っていけば間に合うかもしれませんね。
・夏はさほど暑くないが、冬はきっと寒そうです。 8月のMPREの時期ではありましたが、雨には一度も降られず、晴天が続きました。それでも、朝晩は体格の良いアメリカ人でも長袖でした。ホテル内から出ないとしても、ホテルも温度調節がどうなるかは分かりませんし、個人差や体調もありますから、着脱できるようにしておくのが無難でしょう。
・ホテルは階段の近くで、低層階で予約しておくのが望ましいかもしれません。 Marriott Oakland City Centerはエレベータ4基ありますが、うち1基が修理中です。2月には直っているかもしれませんが、人が増えたり、ラッシュのときは込み合いそうです。階段でさっと降りられるように、というのは現地の学生もアドバイスしてくれていることです。
・夜間の外出は控えること。どこでもそうですが、日本と同じ感覚ではいけません。 夜になると人通りがぱったりと止みます。道は広く、大きいですが、外灯も大通り沿いにしかありません。 私はTシャツにジーパンというラフな格好で(もちろんそう意識したんですが)、慣れてきたので夜チャイナタウンに出かけたりしてましたが、あまり一人で動くのはお薦めできません。 むしろ、オフィス街で朝が早いので、早朝に動けるようにしたほうがよいように感じました。
5.MPRE試験のこと 2時間5分のマークシート試験。 情報はネットで拾えますし、私は全く感触がよくないのであまり偉そうなことを言うのは控えます。 司法試験本番でも関係ありそうだなということで、自分なりに焦ったり、努力して解消した点をいくつかあげておきます。 なお、私と同じように下見もかねてあえてオークランドでMPREを受験する、という方は、Alameda County Education & Training Centerを選択しましょう。 マリオットから徒歩10分、アラメダカウンティの裁判所の向かいで、すごく近い便利な場所にあります。
・持ち込み可能物件は制約があるのでルールをきちんと見ておくこと。 ただ、MPREの試験監督はわりとゆるくて、鞄も部屋の中で壁沿いに置いておくことを許してくれました。マークシート用の鉛筆や消しゴムも予備の貸出をするよと言ってくれてました(ただ、全部の会場で備えられているかは分かりませんから、あてにしない方がいいです)。 CA BARのサイトできちんとチェックしましょう。
・解答用紙の記載欄は、日本人にはいくつかフィットしない部分があるので、心配ならきちんと確認すること。 私が慣れなかったのは、例えば名前のマークシートは氏と名とそれぞれに20マスくらいあります。アルファベットで名前を書いたら、普通の日本人なら大幅に升目があまると思いますが、ブランク(記入なし)の箇所は一番上にある白いボックスを塗りつぶすのです。説明を聴いて周りの学生がやっているのを見たり聞いたりして、やっとわかりました。日本のマークシート試験では体験したことがありませんでした。 郵便番号もアメリカは7桁ではありませんでしたから、どうするねん!と焦りました。特に取り決めがないから、頭から書ける範囲で記入しておきなよと言われ、そのまま書きました。 こうやってわからないことは多分出てくるだろうと思います。アメリカ人はわりと躊躇なく質問しまくってました。私は試験監督のおじさまの声が小さく、座席が端っこで英語力も完全ではないので、ほとんど聞こえなかったですが、慌てず手を挙げて、説明をして試験後に時間をとって確認してもらうことの約束を取り付けました。 不安を抱えたまま試験に臨まず、図々しいぐらいに問題は解消しておきましょう。彼らも親切に対応してくれます。
6.感想 何はともあれ、平穏無事に元気で帰ってこられたことに一安心です。会心の出来とはいかずモヤっと感が残ったままですが、過ぎたことは気にせず、2月に向けて気合を入れなおしたところです。 全くの一人で、引率なく海外旅行というのは実は初めて。 Oaklandはもちろん、アメリカ西海岸自体初めてだったのですが、妻と電話で話しても、開口一番、えらいリラックスしてるねと言われるほどで、我ながらストレスなく過ごせた感じがあります。 日本は好きですけれど、カリフォルニアの開放的な雰囲気と、アメリカンイングリッシュが通じる環境には、快適さを感じたようです。帰国後、お盆休みはなかったのですが、いきなり働いて、特に問題もなく過ごしていますから、風土が合ったのかもしれませんね。
2月の本番に向けても、ホテルや会場の場所、空港との行き来や、室内設備、インターネット環境、周辺の飲食場所など、リサーチできたことはとても収穫がありました。勉強の準備以外には何のストレスもなさそうです。時間やお金の負担を考えるとサイパンなどの近場で受ければよかったのですが、敢えて下見の重要性を示唆してくれた先生には、本当に感謝です。
東京羽田経由のJAL便も快適でした。往復とも時差対応のためほぼ寝ておらず、新設されたプレミアムエコノミーを利用してみたのですが、コンセントも使えましたし、十分です。大阪に戻る身としては、帰路の到着便の関係で、いったん東京で宿泊せねばならないのがちょっと辛いですが、マイレージも使えて、貯められたのでよしとしましょう。
アメリカの司法試験なんて、ほとんど合格するんでしょ?と誤解している人がいるかもしれません。 日本の旧司法試験のように、確かに2%、3%ってことはないです。 ただ、当たり前ですが、大半の受験生はアメリカのロースクール(JD、LLM)を修了して基礎知識を持ってから、2~3ヶ月程度予備校に通って缶詰で勉強して受験します。母集団は記念受験という人は期待できません。 それに、何といっても英語で読み、回答し、文章を書きます。 日本から飛び込みで受験する者にとってはハードルが高い。 カリフォルニア州の試験はアメリカで最も合格率が低く(4割程度)難関とされ、日本人弁護士で留学した人も大半はニューヨーク州のみをとって帰ってこられています。 言い訳したり、予防線貼るわけじゃないですが、そうは簡単にはいかないよということですね。
それでも、カリフォルニアは何だか自分の身体には合っていたように思いますし、試験勉強自体も面白いので、あまりキリキリせず、楽しみながら目標を早く達成できるよう頑張って行こうと思います。
ちなみに、8月上旬の平日3日を休んだことになりますが、現地からSkypeで電話もでき、メールは普通に対応でき、日本と変わらないか、むしろ要らぬモノが目に入らないので集中して仕事をしてしまった感はあります。 2月はさらに長期にわたり、ご迷惑がかかるかもしれないのですが、何となく仕事をしてしまいそうな自分がいて、ちょっと心配ではあります。自分でコントロールすることですし、試験より仕事が大事ですけれども、何どもカリフォルニアに試験のために通いたくはないですね。。。
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