|
|
フリーエリア |
Facebookのアカウントです。ファンページもあります。
|
|
プロフィール |
Author: 前川 直輝
最終学歴 京都大学法学部 司法修習 54期 カリフォルニア州弁護士 Maekawa国際法律事務所・代表弁護士 https://maelaw.jp/
|
|
最近の記事 |
|
|
最近のコメント |
|
|
月別アーカイブ |
|
|
カテゴリー |
|
|
|
プロの仕事〜サッカー日本代表・ポーランド戦での判断 |
サッカーのロシアワールドカップ、日本チームは無事にグループリーグを2位で突破しました。
昨晩の代表戦、もう一つのセネガル・コロンビア戦を観察しながら、スコアが動かなければ警告の枚数で少ない日本が勝ち進むことができる状況で、監督が選手に指示をしてパス回しをして時間を潰し、結果予想どおりスコアは動かず2位を獲得したとのこと。 私は試合を見てないのでなんとも言いようがないのですが、試合後に色々言われているようですけどね。ただ、リスクをとってパス回しをしたことに対して、スリリングな試合を目指すべきだ、恥ずべきだと批判するのは、ちょっと違うと思うのです。プロの仕事というものを勘違いしているし、単なるラッキーじゃないってことを理解していない。
大前提として、試合を会場で見ていた人たちは、時間とお金をかけて楽しみにして行っているわけで、怒っていいと思います。その場で10分も退屈なパス回しを見せられたら、腹を立てる理由は正当にあると思います。それはシンプルに自分の体験として、不満足でしょう。
その他の「評論」をしている多くの人たちは、おそらく攻め上がる試合の面白さ、サッカーとしての美しさが、必ずゴール獲得と試合の勝利とセットで実現できることが前提となっていると思います。素人だろうが解説者だろうが、結局は同じことを前提としています。攻め上がって美しく勝てたはずだと。 監督・コーチ・スタッフ・選手全員、プロとして国の代表としての挟持をもってロシアで戦っています。内容どうこうより、まずは結果を獲得すべきなのは、プロの仕事で当然のことです。それに対して報酬をもらっているのですから。反則等まったくしていないし、むしろ周到に準備をしたことを、手放しで称賛するべきじゃないかと思います。
セネガル・コロンビアの試合より日本のほうが先に進んでいたというじゃないですか。セネガルが一点でも取ったら直ちに敗退であったわけで、日本はリスクを取ったのです。セネガルの試合を分析して残り時間でセネガルがスコアを取る確率を冷静に判断しなければならない。それをやった日本のアナリストや監督の情報収集力、判断力を褒めるべきです。
他ならぬピッチ上の選手はゴールに向かわないというプレイをしたくなかっただろうし、そういう指示を出す監督も断腸の思いだったでしょう。彼も選手だったことはあり、準備の過程でどれほど皆がゴールに飢えているか分かっていて、また優秀で技術があると信頼していたからこそ、ただ後ろでパスを回せ、カードはもらうなという一見するととてもツマラナイ指示を出すのは辛いことです。 それを会場のブーイングの中で、また後に控えているであろう批評家たちからの非難に耐えて、プロとしての仕事に集中して実行したことは、賞賛に値すると思います。
こんな試合子どもたちに見せられないとか、日本の将来にとって良くないやり方だというのは勝手です。しかし、子どもたちには、そのプレイの持つ意味を大人がきちんと説明することで、教育効果は十分にあるのではないですか。試合に勝つにはルールを熟知すること、試合で起こりうるあらゆる可能性に準備した上で、試合中に感情的になっていても目的を達せられるようにコントロールするにはどうしたらいいか、そういった処世術にもつながることを学ぶ良い機会だといえるでしょう。 日本サッカーの将来にとっての価値についても、グループリーグで「美しく」敗退するのと、泥をすすってトーナメントで強豪と本当の真剣勝負をするのと、どちらに価値があるでしょうね。
勝利、引き分けと来て、ポーランドが敗退決定していたので、まるで勝てるような気になっていたのでしょうが、FIFAランク8位、かたや日本は61位です。ランキングだけで強弱は測れないかもしれないが、ポーランドはスペインより上、フランスの次です。敗退が決まっているからといって手を抜くわけではないし、手を抜いたってそれでも日本より強いでしょう。試合で攻めるということは、守りが手薄になるってことです。ヨーロッパの強豪相手に、後半10分15分でどういうことが起こるか、ピッチに立っている皆が一番わかっていたのではないでしょうか。
むしろ、日本がルールを見ながら試合をこんなふうにコントロールできるポジションにいられたということを楽しんで、興味をもって観察するべきでしょう。 ハリルホジッチが直前で解任されたとき、みんなどう言っていたでしょうか。グループリーグを通過できることをどれほどの確率で皆が予想していたでしょうか。こういう「姑息な」判断によってグループリーグを勝ち進むことができるポジションにいるのは、むしろ幸せなことであるし、日本のサッカーの経験値としても大変貴重な出来事ではないでしょうか。
おかげで、最初の2試合で疲労した選手が回復することもできました。控えだった選手もきちんと試合に出て、できることできないこと、肌身に体験できています。 この先の結果などわかりませんが、チーム全体としてとても良い成果が得られたのではないか、そう思います。
サッカーの日本代表と比べるのはおこがましいですけれど、弁護士だって冷徹に結果を追い求めるべき仕事です。たとえ証人尋問がどれだけ鮮やかに見えても、どれだけ素晴らしい筆致で多くの文書を提出したとしても、完全敗訴の判決ならクライアントに満足してもらえないでしょう。負けないようにルールの中でいろんな手を尽くす。判決前に和解に応じるかどうかも含めて、ポーランド戦のパス回しと同じような判断をしなければならない。姑息に見えるそのパス回しを、他の人間がどう評価するかなんてことを気にしてはいけないのだと思います。ルールを守り、倫理に反しない限り、結果を目指して自分をコントロールするということは、美しい姿だと思います。その上で、そういうギリギリの策に出なくて済むようにするために、次に備えて学習し新たな対策を講じる、それによって少しずつ成長ができるのだろうと思います。
そんなふうに彼らの仕事を見たほうが意味があると思います。私は、国家や政治については強く批判してもいいと思っていますが、それ以外の事柄については、基本的にポジティブに捉えるようにしたいと思います。 次戦はいよいよベスト16、ベルギーとの試合です。勝ち進んでもブラジル、ポルトガルが出てくる可能性があり、とんでもなく高い山に見えますが、高ければ高いほど挑む価値がある。是非選手・監督ともベストなコンディションでベストな結果が得られるよう期待しています。
|
|
|