2019年2月試験のEssayのうち第2問を見てみました。 7月以降の受験を検討されていて、この問題を後でやりたい方は読み飛ばしてください。 また、先の投稿でも記載したとおり、試験委員会の模範答案を見る前ですから、正確性には欠ける可能性があることをご了承ください。
さて、Essayの取り組み方の基本ですが、 1. 一番最後の問い(CALL)の部分を読む 問いに答えることが目標です。問題文に何が書いてあろうが、とにかく質問されていることにダイレクトに答えます。 これが出来ていない答案がかなりあります。 また、出題科目を確認することができますし、記載の仕方によって出題意図が推し量れたり、小問に分かれている場合は時間配分にも気をつけることになります。 2. 問題文をざっと読んでイメージを作る 具体的な場面を想像することが大切です。いきなり論点に入りたいとは思うのですが、出題意図とか、結論の方向性(どちらを勝たせるか)については、一般常識や普通の感覚が大切だと思います。具体的なイメージを持つことで、Factも記憶に残りやすくなるでしょう。 3. 問題文を注意深く読んで、思いついたことをメモしておく Issue・論点は思いついたら兎に角書いておきます。日本の試験だと、これは関係ないだろう、といった”判断”が挟まり、必要最小限のことを書こうとしがちです。しかし、これは日本の試験が減点をするからで、カリフォルニア州司法試験は余事記載のペナルティが一切ありません(採点者の主観や印象は別ですが)。模範答案の中にも、まるで関係がない議論をしているものがたくさん見られます。 兎に角忘れないように、メモをしましょう。試験ですから、過去問の傾向から頻出論点ですとか、科目ごとのコツのようなものはありますから、キーワードを見落とさないことです。また、大抵の場合、人の言葉の引用は、とても大切で、いろんな論点が示唆されたり、分析が必要になります。 4. 答案構成をする(紙に書くか、ラップトップにいきなり打ち込むか) 答案構成は配布されるスクラッチペーパーにするべきだ、パソコンがフリーズしたらどうするんだ、というアドバイスが一般的です。確かに、私の受験経験でも、隣席の受験生のPCに不具合が出て、Handwritingに切り替えたのを何度か見ていますから、リスクヘッジとして大切な視点だと思います。 ただし、限られた時間で準備をするというのに、手書き答案の練習をする余裕があるか、また、紙に答案構成をして、それをパソコンで打ち直す手間を二重にかける余裕があるか、は考える必要があります。 私は最後まで、時間内に仕上げることに困難がありました。1秒でも時間が惜しかったので、PCフリーズはリスクとして許容した上で、パソコンに打ち込んでいました。これは意見が分かれるでしょうが、試験でフリーズしにくいようにパソコンを管理したり、そもそもエラーが出にくいと思われるMacを使うとか、リスクを極小化することに注力したつもりです。 5. 以上の過程を必ず1時間で終える。 Essayは1問を必ず1時間でやり終えることです。雪だるま効果とはよくいったもので、5分位いいだろうと思ったら、またたく間に2問目、3問目と時間が押してしまいます。どの問題も等しく点数が割り振られており、どれか1科目で大きく落ち込むと回復が難しいですから、よほどの戦略がない限り、1問1時間を厳守できるようにしましょう。 とはいえ、それでも私は最後の受験時でも10分くらいはみ出て3問目をやっていました。その場合でも要領よく対応できる準備はしました。本番では何があっても焦らないような準備も必要でしょう。
さて、早速CALLを読みましょう。
Bob and Carol filed a lawsuit against Dan to recover for their injuries. 1. What claims may Carol reasonably raise against Dan, what arguments may Dan reasonably make, and what is the likely outcome? Discuss. 2. What claims may Bob reasonably raise against Dan, what arguments may Dan reasonably make, and what is the likely outcome? Discuss
Claimとあり、Injuriesとありますから、Torts・不法行為法かなぁとある程度想像がつきます。Crimeではないし、Procedureを問う科目でもない。登場人物も会社はなくて個人ばかりのようですから、Corporateとかは関係なさそうです。Partnershipは関係あるかもですが、Injuriesですからおそらく身体傷害による不法行為でしょうね。 問題は2つに分かれています。いずれも被告はDanで、原告はCarolとBobで異なります。Bobは普通男性、Carolは女性ですから、夫婦か、恋人か、きょうだいか何かの関係があるのかな、とも想像しておきます。 Tortsだと想定できた場合、Intentional Torts, Negligence、Strict Liabilityなど項目を落とさないようにメモ書きしておくのも良いです。なぜなら、Claim"s"とあるように、どれだけClaim(請求原因)を立てることができるかが勝負なので、論点を落とさないようなチェックリストのようなものを用意しておく必要があるからです。問題文を読み出すと、個別論点や思い込みに集中してしまって、広い視野で漏れがないかチェックできなくなりがちです。 問題文に忠実にいうと、原告のClaims、これらに対する被告の”Arguments”、かならずLikely outcomeを書いて結論付けることが大切です。なお、従来はDefensesと書かれることが多かったですが、厳密な意味での抗弁以外にも、Claimsが成り立つかどうか要件該当するかどうかの分析での反論もありうるからか、Argumentsという言い方になっているのでしょう。 出題意図との兼ね合いで重要なのですが、必ず小問は相互に比較する視点が試されます。CarolとBobとで、何かが違います。その違いは、多くの場合、同じIssueで違う分析・結論を導くことになります。何か比較するぞという意識を持つと、出題意図=比較的多く書くべき箇所、あるいは思いつくべき主要論点を落とさないで済みます。 私は”COMPARE”とか”比べる”と問題文の一番上に書き込んでいました。
第1段落を見ましょう。
Dan, a dog breeder, had some eight-week-old puppies to sell. Bob and Carol went to his house to look at them. Dan invited them into the living room where the puppies were located and said, “Whatever you do, don’t go into the room at the end of the hall.” As they were examining the puppies, the largest puppy, without warning, gave Carol a nasty bite on her hand. Dan told Bob to go to the bathroom near the end of the hall to retrieve some bandages.
1文目で、Danは犬のブリーダー、Bob/Carolはお客さんらしいと分かります。犬に病気があったか、噛まれたか逃げたか、何かトラブルが起きたかなと予想します。”eight-week-old puppies”とありますが、これも見逃してはいけません。8週目くらいの子犬とあります。まだしつけもできていないでしょうし、歯も生え揃っているのかどうか。可愛いから触りたくもなるでしょうね。ただし、物理的に小さいかどうかは書いていません。また”Some”とありますから、何匹かいるので、選びにいくのかなとも想像がつくでしょう。 Danは、子犬がいるリビングに案内をし、「何をしてもいいけれど、ホール(廊下)の端にある部屋には入らないように」と注意します。何か危ないものがあるのでしょうね。ただ、端っこの部屋と言われて、おそらく初訪問のゲストがわかるでしょうか。また入るなとは言われたものの、何故なのかも説明がないですから、言われた側もあまり印象に残らないかもしれません。 次の文章で、キャロルは犬に手を噛まれてしまいます。細かいところも注意深く書かれています。”Nasty bite"とあるから、子犬の甘噛みじゃないよということです。また、Without warningとあるから、全く予期できなかった=よくあるケース、犬を激昂させるようなアクションもなく、被害者側に噛まれたこと自体に過失がないということが明確だと思います。 DanはBobに、廊下の端っこにあるバスルームに向かい、包帯を取ってきてくれと言います。あれ、さっきは廊下の端っこの部屋には入るなと警告したはずです。何か起こりそうな予感です。間違いやすい指示をしていますし、先程の警告を無意味にするような言い方になっていますね。
Tortsの定石ですが、動物が出てきたらAnimalに対する典型論点はフォローします。Wild animalに対するStrict Liabilityがありますし、飼っている動物domestic animalについても原則Strict Liabilityはないですが、飼い主が動物の危険性を知っていて、それがその種類で異質な危険であれば、例外的に無過失責任を負います。それ以外は一般の過失責任ですから、その動物を飼っている一般的な人/reasonable prudent personを想定して、どういう注意義務があるかを検討するべきです。普通ならこういうことをすべきだ、という基準を考えて定めることがNegligenceの要点です。子犬のブリーダーとしてどういう注意をすべきだったでしょうか。 また、Tortsの典型論点として、不動産の所有者の特別な義務があります。MBEでも頻出ですが、不動産オーナーがTrespasser(不法侵入者。これは発見可能な場合と、そうでない場合とで分かれますね)、Licensee(オーナーの許諾を得て、ビジネス以外で立ち入る人。隠れた危険で、オーナーが知っていたものについては保護する責任があります)、Invitee(商用目的で立ち入る人、その他公に開かれた場所に立ち入る人)の3種類に分かれます。 今回は、子犬のブリーダーが、その客を招き入れていますから、Inviteeですので、隠れた危険で、事前に知り又は知っておくべきものから守る必要があります。Danは子犬をリビングに放し飼いにしているところ、子犬が突然に客の手を噛むというのは、Inviteeにとっては隠された危険ですし、飼い主は知っておくべきことでしょう。ただ、”the largest puppy"とありますから、大きい子犬を見るときは注意すべきことがInvitee=Carolにもわかったはずだ、ともいえます。いずれの可能性もあるでしょう。 さらに、Carolが包帯が必要なくらいの怪我をしています。Batteryは問題になるでしょう。少なくとも現地学生は取り上げる可能性があります。もちろん、Danにこの時点でIntentを認めるのは少々厳しいようにも思いますが、MBEでもやるように、BatteryはGeneral Intent Crimeですから、"harmful or offensive conduct to plaintiff's person with both intent and causation”というルールに、子犬をおそらく放し飼いしているリビングルームに他人を通すという行為が当てはまるかどうかです。Batteryは具体的なDamagesを必要としませんから、噛まれたこと自体で成立しうるところです。 あと、想像力をたくましくすれば、あれ、包帯はいいけれど、動物に噛まれたのに消毒しなくていいのか?と疑問が湧いてもいいですね。そうやって予測して読むと、次の段落にスムーズに入れます。 加えて、この時点では微妙ですが、Carolが噛まれたときにBobが隣にいました。BystanderであるBobにも責任が発生するかは頭をかすめます。Intentional / Negligent Infliction of Emotional Distressですね。ただし、奇妙なことに、BobとCarolがどういう関係にあるのか記載がありません。Bystanderが直接の被害者が被害にあうのを目にして精神的苦痛を受けるケースでは、原則としてFamily memberであることと、それを被告が認識している必要があります。あとで出てくる最後の怪我のシチュエーションと違い、ここではBobがどういう感情にあったかの描写もなく、Donに包帯取ってきてくれと頼まれて終わっていますから、あえて取り上げなくてもいいでしょう(それでなくとも、本問は論点がたくさんあります)。
実は、私の仕事ではTortsが主力分野の一つなのですが、試験科目としては少し苦手意識がありました。論点がたいていたくさんあるし、日本法弁護士の感覚ではかなりリモートな議論をさせられるからです。ただ、よく考えれば、故意責任、無過失責任、過失責任を順に検討し、過失責任では、Negligenceの一般論とSpecial dutyの論点とに分かれ、前者では同じ状況にあるReasonable prudent personの基準をどう設定するか、Special dutyはどういうFactがあれば思いつく必要があるか(今回なら、犬=動物=Animal、Went to his house=建物=Property owner against Invitee)を整理すれば、漏れはないと思います。
第2段落を見ましょう。
Forgetting Dan’s earlier admonition, Bob opened the door at the end of the hall, thinking it was the bathroom, and entered a darkened room where Dan kept an enormous pet chimpanzee. The chimpanzee jumped between Bob and the door, beat its chest and made menacing hoots. Frightened, Bob stood still.
Bobは廊下の端っこにある部屋のドアを開けてしまいます。いきなり”Forgetting”とありますからBobが不注意だった可能性はありますが、それでComarative negligenceが問えるかどうか。なお、Admonitionという単語は難易度高いですが、その前に”Forgetting Dan's earlier"とあり、その後は端っこの部屋のドアを開けたというのですから、注意とか警告とか、そういう意味だろうと推測はできますね。英語力の限界は母語者でなければどこまでもあるわけですが、心配しなくても、文脈から推知可能なので焦らないことです。 thinking it was the bathroomとあるので、Mistake of factがかってに思いつきます。関係があるかどうかはさておきます。Bobが入ったのは”Darkened"暗くなった部屋で、そこには”Enoumous"巨大なチンパンジーがいました。ここでもAnimalが出てきましたね。今度は大きなチンパンジーですから、Wild animalの論点が全面に展開されます。”Pet"と書かれていますから、DanがDomesticだと言いたくなるかもしれませんが、Enormousと形容されていますし、その後の展開にあるように、動物の性質として危険性が高いですから、Strict Liabilityの問題が発生するといって良いでしょう。暗いというのは、中に入ってみないと何の部屋か分からない状態だということかと思います。また、チンパンジーにとっても刺激を与える状態であったともいえるでしょうね。 チンパンジーは、ボブとドアの間にジャンプして入って、胸を叩き、威嚇する鳴き声を出します。Menacing hootと言われても私は正確な日本語が浮かびませんでしたが、チンパンジーが胸をたたき鳴らしたというのと、その後の文章でボブが怖くて立っていたというから、威嚇されるなり、大声をあげられたのだろうと理解しました。それで十分です。チンパンジーは動物の中では知的能力が高いですが、いきなり怒り出したのはやはり暗い部屋で静かにいるのにドアが自由に開くようになっていたことや、開けた人が中に入ってくる=距離を詰めてくるような状態になっていたことが原因だと思いますね。 Bobは怖くて立ち尽くしてしまいます。Frightenedとあるので、Emotional Distressを想起します。IIEDとNIEDとがあり、DanはBobにバスルームに行ってくれと伝えただけですが、その行為が結果として上記のような事態を生んでいるので、Intentとしては十分ともいえます。 Danの反論としては、いやBobが警告を忘れていたじゃないかとか、Bathroomと間違えて部屋に入ったじゃないかといいたいでしょう。しかし、前者は、警告をしたタイミングが十分であったのかの問題がありますし、警告だけで足りたのか、そもそもチンパンジーを飼っている部屋は施錠しておくべきじゃないのか、ドアの外に注意表示すべきでなかったのかという議論があり、そちらのほうが強いでしょう。後者についても、おそらくはじめて立ち入った建物で、包帯とってこいと言われ、指示も十分でないのに、自由に出入りできる部屋のドアを開けてしまい、しかも中が暗くで入ってみないと何の部屋かわからないということ自体は、よくある話でしょう。Causationは否定されないし、Comparative negligenceというのも難しそうです。 もう一つ重要なのは、”Bob stood still.”とあることです。固まって動けなくなってしまったわけです。この状況は、False Imprisonment(監禁)を想起できます。MBEでも良く出てきますが、拘束の時間の長短は問いませんし、合理的な方法で逃げられない状況で、一定の場所で自由を奪われれば十分です。今回も該当することになるでしょう。Intentionalといえるかは悩むところですが、部屋の施錠もせず暗いところで巨大なチンパンジーを買っておいて、廊下の向こうのバスルームに行ってきてと言われたら、かなりの確率で扉を開けてしまう、そういう全体的な指示から自由の制限までの流れは、その行為をすることの認識=Intentを否定できないのではないでしょうか。あまり結論で悩んではいけません。ここはどのみち否定されても、Negligentだという結論は動かないですから、Bobに不利益はありません。 Danにしてみれば、結局Bobは自力で脱出できているじゃないか、と反論したくなるでしょう。しかし、脱出したときに深い傷を負わされていますから、No reasonable means to escapeとはいえるでしょう。怖くて逃げられない状態に陥らせたら、それで十分監禁にあたるといえます。
第3段落を見ましょう。
In attending to Carol’s bite, Dan mistakenly grabbed a bottle of heavy-duty solvent, thinking it was a bottle of antiseptic. When Dan rubbed its contents into Carol’s wound, she began to scream and shout in pain. Hearing Carol’s cries, Bob barged past the chimpanzee, which gave him a deep gash to his head as he passed. Shaken and sore from their injuries, Bob and Carol fled Dan’s house.
Danはantipaseticと間違って、heavy-duty solventのボトルを手にとってしまいます。そして、Carolの傷に内容物を塗り込み、彼女は痛くて泣き叫んでしまいます。ボトルが何と何を間違えたのか、これもイメージつかみにくいですけれど、先に想像したとおり、DanはBobに包帯を取りに行かせつつ、消毒したのだろうと想像はつきますね。そして、消毒じゃなくて、業務用の傷に塗ってはいけない何かを塗りつけてしまったこともわかります。答案を書く上ではそれで十分です。 消毒剤と業務用溶融剤を、取り違えるような場所で一緒に保管しているのは過失が大きいでしょう。また、ボトルを手にとったときにも、ラベルとか色で、気がつくでしょう。Negligentだといえますし、そもそも人に危険な化学物質を塗り込んでいるのですから、Batteryが成立するでしょう。 さらに、Heavy-duty solventを体に塗りつけるなんて、Ultra hazardous activityじゃないかともいえるかもしれません。少し議論としては遠いですが、少なくとも思いついても良いと思います。 Danは、いやMistake of factだと言いたいでしょうし、Carolを助けようとしただけだとも言いたいでしょう。ただ、BatteryのDefenseにはならないでしょうし、これを上回る程度の大きな過失(消毒液は、薬の棚に並べておくべきですよね)があるので、十分強い反論とはいえなさそうです。 Danは、Carolを介抱するためで、Consentがあったとも言うでしょうが、同意の範囲がDanの勘違い行動まで包摂するといえるか、なかなか難しそうです。
BobはCarolの悲鳴を聞いて、チンパンジーを押しのけて部屋を出るわけですが、そこで頭に深いキズを負うことになります。ここでもBobに対するBatteryが発生しそうです。また、Bobにも同じように、Inviteeに対するProperty ownerとしてのDutyがありますから、Negligentだといえるでしょう。 Danは、Bobが無理してチンパンジーをどけようとするからだ、自分を呼んでくれたらいいのに、というでしょう。被害者の行動自体が因果関係を切断するという趣旨で反論できるでしょうが、チンパンジーの部屋に入ってしまってドアの前に立たれたら慌てて出ようとすること自体、Forseeable だと十分言えるので、Causationは否定できないでしょう。Carolの悲鳴を聞いて、登場人物の中で唯一の女性で、同行者ですから、悲鳴であわてて出ようとすることも、当然予想がつきますし、それはDanが間違って消毒液じゃないものを塗り込んだからですから、Causationは否定されないでしょう。 結局、BobとCarolは、怪我で震えて痛くなって、Danの家から逃げ帰ります。それぞれに対するEmotional Distressはここでも確認されます。注意すべきは、shaken and sore from "their" injuriesとある点です。BobはCarolの手の怪我を見ていますが、CarolもBobがチンパンジーに頭に深い傷を付けられた姿を見て、怖くて痛くて逃げ帰ったわけですから、BystanderとしてTortsが成立する可能性があるでしょう。 さて、ここまで読んできて、あらためて最終CALLを読むと、”filed a lawsuit against Dan to recover for their injuries”とあり、Injuries=Carolは手の怪我、Bobは頭の怪我について議論を絞るべきようにも受け取られます。それが正しいとすると、IIED・NIEDを外すことができます。
1. Carolについて Battery; Puppy's nasty bite =Assumption of risk(子犬を選びに来て触りに行っている?) Rubbing the contents of a bottle of heavy-duty solvent =Mistake of fact? Consent? Negligence:Property owner's special duty for a business invitee Duty to warn all of the hazards discoverable to the owner =子犬が噛むのはInviteeにとって予想できない話?Nasty biteまでは想定できなかったのでは?それくらいは生まれて8週にもなっていたら飼い主として理解しておくべきでは? Negligence:Domestic Animal owner's duty Dangerous propensity & uncommon among the species=子犬としてそんな怪我をさせるような噛み方をするのは普通じゃないのでは? Strict Liability: No
2. Bobについて False imprisonment;チンパンジーの部屋に閉じ込めたといえるか? =No reasonable means to escape =Causation:Bobが逃げるときに負った怪我に関連性ある? Strict Liability: Wild Animal =Causation:Bobが逃げようとした?>Carolが泣き叫んだのはDonの行動によるもので、それを聞いたBobが慌てて部屋を出ることは想定できることでは? Negligence: Property owner's special duty for a business invitee Duty to warn: ”Don't go into the room at the end of the hall"で十分か?★カギカッコの言葉は十分に分析する必要がある。 チンパンジーを飼ってはいけない or 飼うなら施錠すべき+注意表示をするのが普通ではないか?
これで十分かどうかは自信がないですが、私が書くとしても1時間でいっぱいいっぱいだろうと思います。これに加えて、やはりFrightenedとかShakenとか出てきますから、Emotional Distressの議論を捨てるのは躊躇します。そうでないと、特に最後のDanの家を出たところの文章があまり意味をなさないことになってしまいます。時間に限りがあるから、Carol、Bobそれぞれに自分の怪我に関するEmotional Distressと、可能ならBystanderとしての被害の論点に一言触れておければ、加点事由でしょうね。
現時点で、どこまで書けたら合格ライン=スコア65かは判断が難しいです。なぜなら、試験委員会としては出題のときに模範正答を想定しているのですが、実際は、受験生の答案を一通り見て、みなで集まって何にどこまで配点するか基準を作ってから、実際の採点に入るからです。 Tortsの場合は、まずは論点を広く拾うことが必要であると思います。その意味で、問題文に典型論点のトリガーワードが散りばめられていますから、CarolとBobでClaimは2つずつ、Bobは特にWild Animalの論点がヒットするので3つが望ましいです。その上で、Donの反論として、子犬を自分たちで見に来ていること、最初に注意喚起したことの2つをきちんと取り上げることが必要でしょう。
冒頭のTIPSにならって出題意図を推し量ると、同じ論点・同じ種類の事実で、CarolとBobを比較することが重要でしょう。 第1に、両者ともDonの建物に招き入れられたInviteeですが、彼ら2人に対するDonのDuty to careの内容は違うこと。第2に、両者とも動物に被害を受けているが、その内容に違いが出るか。 簡単に整理すると、Carolはリビングルームの子犬、Bobは廊下の奥の暗い部屋にいるチンパンジーですから、場所と動物の種類で区別できます。Danが注意したのは廊下の奥の部屋のことだけですから、どちらかというとBobの2問目のほうが長くなりそうです。それらのコントラストを付けることができれば、加点事由です。私がスコアを取る上で使っていたのは例えば、”Unlike Carol”とか”Different from Carol's claim”というような一言です。これが加点につながるのは、不合格時に良いスコアが取れている答案で確認ができると思っています。
もう一つ、小問1・2と多くのClaimのRuleが重複しますね。これはたとえラップトップで受験していたとしても、ペーストするよりも、Issueの名前は例えば”Property owner's duty to care for Invitee"と揃えた上で、See rule aboveと略記することが勧められています(Graderだった人のビデオか何かを見ました)。これによって時間の節約もできますし、Issueの配点の最低限はゲットでき、Analysisに時間を多く割けます。
答案構成をしたら、あとは書くわけですが、時間配分をきちんとします。それぞれの時間は、決めたら必ず守り、次の論点に行くことです。ここは紙である程度ラフに数字を記載しておくことでしょう。コツとして、 ▼IRAC(Issue-Rule-Application-Conclusion)のルールを守ること ▼ただしIssueはヘッダーをつければ十分で(例えば、Batteryとか、False imprisonmentというタイトルを書いて、次の行でBattery requiresとルールを書けば十分)、文章で”The issue here is"と書かなくてよいこと ▼必ずIssueごとのConclusionを先に書くこと(途中答案じゃないことをアピール)+Callにあわせること(Therefore, Bob is likely to prevail)
さて、長々書いてきましたが、問題文をこんなふうに読んで見ましょう、論点を抽出してみましょう、という一つの提案として見ていただければ良いと思います。全く外れて話にならない、ということはないかと思います。 このTortの問題は、論点自体、想定できないような珍しいものはないように思います。その意味で難易度が高いとまではいえません。ただし、いわゆるRace Horseと呼ばれる、多論点で時間に限りがある問題だと思う(Tortsは特にその傾向が強い)ので、どこまで整理して淡々とすべてに触れた上で、過去問と違う部分=出題意図の部分だけ少し手厚く説明できるかが勝負かと予想します。 受験生の方から、こういう論点の抽出はどうしたらいいでしょうかと質問を受けることが多いです。もっともな疑問で、一番大事なのはIssueを拾うことです。Issue単位で配点がされているので、それが拾えているだけで最低限の点数が取れますし、1つ、2つ落とすだけで他がどれだけ書けても回復ができないからです。 まず、今回検討してみたように、「Essayの問題文は一つとして無駄がない」ということを過去問を読んで十分分析することです。読み方の工夫は色々ありますが、コンマやピリオドごとに分析して(蛍光ペンや色ペンで印をつけました)、それらがどう関係するのかを一つずつ注意することで論点落しがなくなる、という手法を勧めています。 次に、科目ごとの”お決まり”がある程度存在することに気が付きます。科目数は多いですが、科目ごとの定石、パターンというのはそれほど数多くはないと思います。 あえていえば、MBE科目は、論点数も多いし、ルールの知識はMBEで受験生が獲得しているのが前提なので、Fact patternも混乱を招くような書き方が多いですが、CA Specificの科目は同じようなFactが繰り返し出題される傾向にあると思います。 事前の対策として、何度か触れていますが、1日目がWriting、2日目がMBEですから、2日目の精神的な平穏を確保するためにも、MBE科目からしっかり学習することです。MBEの科目は2日目で必ず全部やるのですから、MBEの学習とEssayの学習をリンクさせること=Rule statementを両者で同じもので覚えることです。また、今回の問題でもそうですが、教科書のように長々とはかけませんから、いかに短く過不足ないものを準備できるかだと思います。 この準備の段階で、日本人ノートがどうとか、どの本が良いとか、固定的に考えるべきではないように思います。予備校のコースを受講されている方はそれを活用することです。オススメを尋ねられれば、以下の投稿でご紹介している本でしょうか。その他、受験生・合格者のノートを買えるサイトもあります。その人の覚えやすい形式、文章のものを用意すること、あとは練習の中でよりよい書き方を見つけたらその都度アップデートすることでしょう。 カリフォルニア州司法試験・Essay対策について
私の文章力の限界もあるので、なんだかあれこれまとまりがないようにも思いますが、Activeに問題文を読むという姿勢をお伝えしたいというのが目標です。ご参考にしていただければ幸いです。
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