ワンちゃんを飼っている者としては、許せないニュースに接しました。
盲導犬:数カ所刺されてもほえず…出血も耐え男性と歩く 毎日新聞 2014年08月27日 21時47分(最終更新 08月27日 22時17分)
さいたま市の全盲の男性(61)が連れていた盲導犬が先月、何者かに刺され、けがをする事件があったことが分かった。男性が仕事先に向かう電車内で被害に遭った可能性が高いとされるが、訓練された盲導犬のため事件当時もほえるのを我慢したとみられる。県警武南署は悪質だとして器物損壊容疑で捜査している。
刺された盲導犬はラブラドルレトリバーの雄で9歳の「オスカー」。同署によると、右の腰付近を先のとがったもので数カ所刺されたとみられる。
何故そんなことをしてしまうのか、背景事情が全く分かりません。 ですが、犬のこと、人のことそれぞれに大きな懸念があります。
第一に、この盲導犬のオスカー君が、声もあげられず、為すがままにされてしまったということに心が痛みます。彼のご主人への忠誠心は揺らいでいないのでしょうが、人に対する信頼、外界に対する警戒心という点で、肉体だけでなく心にも大きな傷を残してしまったのではないかと心配です。 第二に、盲導犬を連れている視力に障がいのある方にとって、盲導犬はただの犬ではなく、いわばその人の「眼」です。盲導犬を攻撃するということは、人間の眼を傷つけているのと同じことをしています。そして盲導犬は視力を補っているだけでなく、ときに疎外感を覚え、非常な不安を抱いている視力障がい者にとって、絆で結ばれた心の拠り所でもあると聞いたことがあります。自分の傍らで、忠実に寄り添いながら、バディが耐えていたとなると、そのパートナーとしてどうにかしてやれなかったのかと自責の念にかられてしまうのではないかと、とても心配です。
動物を傷つけること、特に、盲導犬を傷つけることが、ワンちゃんや人間、そして同じ立場にいる人たち、訓練や養成に携わっている人たちにとって、どれほど酷いことかということを、私たちも想像しておきたいものです。 ところが、動物を傷つけること、に対するペナルティには、記事にあるとおり限界があります。
動物への虐待を巡っては、動物愛護法違反罪(2年以下の懲役か200万円以下の罰金)も適用されるが、悪質なケースや飼い主が明確な場合などは器物損壊罪(3年以下の懲役か30万円以下の罰金もしくは科料)が適用される。
結局のところ、愛護法が出来たとはいえ、「モノ」という扱いを超えないということです。 アメリカやドイツといった国の保護法制から見た保護体制の遅れというのは、悲しむべき程度にあるといえましょう。 近時は、ペットが様々な事情で傷つけられた、殺されてしまったという裁判例で、今まででは考えられない程度の慰謝料金額が認められているケースもありますが、それとて人間の怪我に比べれば何分の1の程度です。 地域問わず、もはやペットは私たちの生活に切っても切り離せない存在であり、人間と変わらない価値、位置付けであると思いますから、そのかけがえの無い存在に対してどういった法制度があり得るか、真剣に検討をすべき状況にあると思います。
私の家でも犬を飼っています。飼い主に似たのか?とても天真爛漫ではありますが、お馬鹿で、もうちょっとお利口さんになってくれないものかなと思うこともしばしばです。 それでも、調子が悪いとか、怪我をしたとなったら、とても心配になります。見知らぬ人に傷つけられたとなれば、底知れぬ怒りを感じるでしょう。それが、自分の補助として頑張ってくれていると盲導犬としてパートナーだったら、と思うだけで、涙が零れそうです。
ペットに関していえば、動物の愛護を訴えるだけでなく、飼い主の側のマナーや責任といった問題も大きくクローズアップされています。マンションでルールに違反してペットを飼う場合の対処等、現代的な紛争も生じており、ペット法・動物に関する法律は、今後より焦点があたっていくだろうと思います。
犯人については、適切な処罰は必要ですが、普通の感覚ではないわけで、何か事情があるかもしれません。そこは冷静に見守る必要があります。 今はただ、オスカー君の命に別状がなさそうなのでひとまずは安心しつつ、盲導犬と飼い主の双方が、心の傷を癒されるよう、少しでも回復することを、切に願うばかりです。
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