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 前川 直輝

Author: 前川 直輝
最終学歴 京都大学法学部
司法修習 54期
カリフォルニア州弁護士
Maekawa国際法律事務所・代表弁護士
https://maelaw.jp/

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July 2019 - Q4 - Professional Responsibility
July 2019の試験結果がリリースされて、合格者の方は今後、出来るだけ登録がスムーズに進むように、Moral character determinationやAttorney's oathの手はずを粛々と準備してください。
捲土重来を期する方は、いまのシステムでは科目毎のスコアが出るかと思いますので、まずそれを冷静に分析し、出来るだけ当時のことを思い出しておくこと、特に、期待していたスコアと実際のスコアの乖離があるかどうか、またスコア自体がどこまでの意味があるかをよく検討しておきましょう。
その上で、答案が戻ってくるので、必ず誰かに見てもらうようにしてください。私もご協力は可能です。

California のEssay対策について質問されることが多いのですが、私がこれと進められる本は、以下リンク先のものです。
好みはあるでしょうが、独学する時間が長い人の場合、検討の仕方や論点の取り上げ方、RuleやApllicationの書き方は、一番省力化しているし、日本人受験者ないし英語が母語でない方には真似がしやすいのではないかと思っています。
古いのが玉に瑕だったのですが、Mary Basickさんも反響に答えられたのか、2018年に改訂版が出ているので、現在の受験体制にも即応していると思います。Facebookの受験生グループでも、多くの合格者が勧めておられます。
カリフォルニア州司法試験・Essay対策について

今回は、PRを取り上げます。
July 2019 Essay & Performance Test - Questions
個人的にも登録弁護士としてカリフォルニア州の新しい倫理規則は分かっておく必要があるので、それを見直すきっかけとしようと思って選択しました。また、PRは、思いの外、論文の書き方が難しく、自分も最後まで苦労しましたし、多くの受験生の方が悩まれている科目のようなので、1つの例としてお示しします。

検討の仕方は、以下の過去問検討記事と同じです。
February 2019 - Q2 - Torts
なお、試験委員会からのSample answersは、本記事作成時点では開示されていません。私が模範答案や正解を作れる立場にはありませんから、あくまで比較的最近の合格者による、取り組み方、考え方の参考にしてください。

【Callの分析】
1. Larryは、モーションを提出せよというPeterからの指示(複数)に、倫理的に従うことができるか?議論せよ。
2. Larryの、ダメージを与える書類(単数)に関する義務(複数)は、何があるか。議論せよ。
3. Larryは、XYZのジョブオファーに関して、どのような倫理的義務を尊重しなければならないか。議論せよ。
カリフォルニアとABAの諸規定に基づき、回答しなさい。

試験問題の科目は、Professional Responsibilityだと分かります。CA/ABAとありますから間違いありません。
また、PRオンリーの問題ではないかとも分かります。本文の小問は、すべてEthicalな判断について質問されています。
ただし、小問2は微妙で、”What are Larry’s obligations”とあるだけで、Ethics, Ethicalの単語がありません。倫理に限ったものとはされていないことに留意する必要があります(民事訴訟上のルールは留意が必要です)。

小問の記載のみからわかることは、実はたくさんあります。

▶Larryは弁護士である。
▶LarryはおそらくPeterという上司(パートナー)の部下であるアソシエイトではないか(小問1でInstructionを受ける立場なので)
▶(1)について、裁判上のMotionにつき、Peterから何度か指示があり、それぞれについて倫理面で何か問題があって、アソシエイトとして従うべきかどうか悩ましいこと(上司の指示に従ってはいけない場合なので、相当深刻な問題ではなかろうかと想像できます)。
▶(2)について、Damaging documentというのは、通常、自分のクライアント側に不利な書類という意味です。Documentと単数形ですが、ObligationsとLarryの従うべき義務は複数検討が必要です。一般的にいって、自分には不利だが、相手に出す必要があるかどうかということが問題になるのは間違いなく、Discoveryが絡んでいるなというのは、訴訟手続がわかっていれば本文を読まなくても想像がつきます。
 また、PR全般にも言えますが、Damagingであるというのが、自分のクライアントにどのような不利益があるのか=依頼者へのベストプラクティスを提供すべき義務と、相手方や裁判所に呈示しなければならない要請=公平・誠実の観点とのバランス、比較が重要だということも分かります。
▶(3)について、XYZは弁護士であるLarryに対して転職採用を促しているようですが、何の関係もないローファームであれば悩みは出ないでしょうから、小問(1)・(2)に関連する相手方弁護士の所属事務所じゃないかということくらいは、出題パターンを考えれば予測がつきます。そうでなくても、少なくとも弁護士が事務所を移るときに問題になる、守秘義務の問題、利益相反の処理の問題は、必須論点として間違いなく上がることでしょう。



この時点で、答案にこんな風に書くと思います。
答案構成を紙の問題文、スクラッチペーパーにされる方でも、これはLaptopに書いてしまったら良いです。

Q1. Peter’s instructions to file the motion

Therefore, L may not ethically follow P’s instructions to file the motion.

Q2. Larry’s obligations in relation to the damaging document

Duty to disclose

client’s benefit and royalty

Civil Pro?

Therefore, L owes above obligations in relation to the damaging document.

Q3 Larry’s ethical obligations with regard to XYZ’s job offer
Imputed Conflict of interest
       Screening
former client



Therefore, L must respect ethical obligations as above with regard to XYZ’s job offer.

重要なのは、各小問に対応した結論を書いておくことです。
途中答案でないということや、形式面で整っていることが形式で表現できます。
問題文に忠実に応答しようとしている答案だということも表現できます。
私は受験経験からこれを学び、少なくとも合格したときには全ての答案(PT含む)で実行しましたが、過去の経験に照らしても5ポイントは変わると思います。
さて、肝心の本題に入りましょう。英文一般や、試験問題一般にいえることですが、段落ごとにテーマがあります。

【問題文の検討〜段落ごとに】

<第1段落>=当事者の把握、事件内容・手続の把握
Smith=XYZ vs Jones ABC (L is an associate at ABC.)
Case=improper manufacture tools
Smith requested discovery and Jones to prepare responses (L).

▶第1段落は、基礎情報だけですがイメージをしておく必要があります。原被告も、a suit broght by Smithとあって、米国の事件は大抵、X v Yと原告が先、被告が後、vsとかvで”対”をつけるのが普通ですので、問題文の書き順に関わらずこういうメモを取ります。
Lがどういう立場か(予想通りassociateですね)、誰がクライアントか、何をしているところか、をイメージしておくことです。
小問を先に読んでいれば、ここから上司のPeterからの”無茶振り”があるだろうし、悩ましい証拠が出てくるのだろうと予想がつきます。
▶若干気になるとすれば、この”Suit”が連邦裁判所か、California州裁判所か、どちらで提起されているかまでは特定されていないことです。Larryがカリフォルニア州の弁護士だろうという想像はつきますが、依頼者や相手方当事者が同州の法人とは書いていないですからね。あとで民事訴訟の手続が問題になるかもしれませんが、管轄も特定できないので、特に小問(2)でEthicalの文字がなかった点を気にしつつ、民事訴訟法一般の原則を注意すれば、細かなディスカバリーに関するルールまでは必要ないだろう、という想像はつきそうです。

<第2段落>=Motionに関するPeterの指示
Peter (P) - partner at ABC, supervising L.
P “Instructed” L to file a motion to compel discovery of documents that Smith claimed contains its trade secrets.
L researched the matter, told P that L thought the motion would be denied and may give rise to sanctions.
P, “who had more experience with trade secrets”, told L to file the motion.

▶困ったパートナーのPeterが出てきました。前提条件ではありますが、この特定の事件について、Larryを監督する立場にあるパートナーだということが確認されています。事件に直接関連しないパートナーではないとか、例えば仕事をとってきただけでPeterを直接管理する立場にないパートナーではない、つまり、Peterはこの事件に直接コミットし、かつ、Larryに直接指揮監督をしなければならない立場だということです。試験問題が広範にならないよう、答えやすいように、前提を絞り込んでいるわけです。こういったことは、Law firm事情がイメージできないとわかりにくいかもしれませんが、Suitsのようなアメリカ・イギリスのFirmを舞台にしたドラマや映画を見ていれば、ある程度のイメージは湧くかもしれません。前川さんは問題文に無駄がないといったものの、ここはどういう意味があるんだろうかと悩まれるくらいであれば、素直にとりあえずは受け取っておかれたら十分です。
▶段落中、Peter のInstructionは2つあります。これが大切で、各Instructionに応じて論点をピックアップし、論じなければなりません。小問1をもう一度見返してください。”Peter’s instruction to file the motion”とあります。ここでの指示は必ず2つ以上あるということです。
▶Subordinate lawyerの規制については、ABA Rule 5.2(b)とCalifornia RPC Rule 5.2(b)ともに一緒で、”A subordinate lawyer does not violate the Rules of Professional Conduct if that lawyer acts in accordance with a supervisory lawyer's reasonable resolution of an arguable question of professional duty.”がルールです。
 正確に表現できればベストですが、普通に考えて、まずは所内で問題を議論しておくべきで、Yes/Noいずれもあるのなら、最終は上司の合理的な判断に従う、というのが、associateの務めでしょう。
▶1つ目=PeterはLarryに対して、”書類のディスカバリーを強制するMotion(裁判所命令)を提出せよと指示します。ただし、その書類は、相手方であるSmithが営業気密を含むものだと主張しています。まずこの指示をうけたときに、Larryは従うべきだったでしょうか。
 弁護士一般のルールとして、弁護士は、法令に通暁していなければなりませんし、十分誠実な調査を実行する義務もあります(Zealous representation, thoroughness)。Lは調査を現実に行ったとされているので、ここはあまり問題ではありません。
 また、弁護士は、法令・倫理について疑問が生じた場合には、上司の指示に盲従してはいけません。今回であると、Larryは、Motionが認められない可能性があり、かつ、そのこと事態がSanctionに結びつく可能性があることに思い至ります。そうすると、法廷侮辱罪の問題にも発展するわけで、倫理的にそのまま従うわけにはいかないでしょう。
 細かな話として、弁護士が倫理的な問題に直面したときに、他の弁護士に対して意見すべきかどうか、指摘すべきかどうかという問題があります。Californiaでは一般的に義務としてあるとされていたかと思いますが、実際に、LarryはPeterにそのことを伝えています。Sanctionの可能性という重大な問題についてクリアできていない以上、この時点では、そのままPeterの指示に従うわけにはいかないでしょう。それが1つ目のInstructionに関する回答で、Larry may not ethicall follow Peter’s instruction at this point.というのがあり得る結論です。

▶2つ目=Peterは、再度、Motionを出せと指示します。理由は、営業機密に関してLarryより経験があるからだと書かれています。
 特定の業務分野が出てきた場合は、Competitivenessが問題になるでしょう。
 ここからは難しいですね。問題文が十分な情報量でないので、営業機密について経験がある上司、というだけでは、何ともいいようがないように思われます。ただ、以前から指摘しているように、小問を比較する、という観点からすると、小問2とコントラストをつけることは考えられます。
 すなわち、第3段落(小問2)は、明らかに理由がない指示なのに対し、第2段落では、Larryの判断が断定的でないことを対照させることは可能です。”he thought that the motion would be denied” “may give rise to sanctions”というように、可能性を示しているだけで、どの程度の確度であるのかまでははっきりとしていないからです。そうだとすると、営業機密により経験が多いPeterは、営業機密についてDiscoveryでどういう取扱であるかにも通じていると思われるから、Arguable questionではあるものの、上司のReasonable resolutionと言ってよいので、これに従ってEthical dutyに反しないで、Motionを提出することは可能だ、という結論は、十分選択肢です。

 しかし、ここでのテーマは民事訴訟のDiscoveryにおいて、Motion to compelで書類の開示を強制しようということに対する裁判所の態度であって、Sanctionが与えられるかどうかは、営業機密に関する知識経験だけでは決せられず、むしろ民事訴訟やディスカバリーの専門知識や経験が重要ともいえます。
 Peterは、なぜLarryに再度同じ指示をしたのか、Larryの指摘に対する具体的な応答をしていませんね。営業機密だったら俺のほうが良く分かってるんだから、ではLarryの意見を排除し、クライアントを合理的に守り、あるいは、法令や裁判所の尊厳を尊重した判断とはいえないかもしれません。
 また、クライアントや弁護士事務所にとっても、Sanctionを受けることは大変重大な問題です。この場合、Peterを飛び越えて依頼者に報告・相談をすべきではないでしょうか。あるいは、他のパートナーや、他の民事訴訟に詳しいパートナーや弁護士に相談すべきではないでしょうか。
 こういう分析をするのなら、Larry may not、というのが結論となります。それも1つの選択肢だと思います。
 ここは結論が分かれるところですから、あまり問題文から離れず、”More experience with trade secrets”という箇所をきちんと分析して、きちんと議論を尽くした上での判断だといえるかどうかを悩んでいれば、合格点だと思います。

<第3段落>=Damaging documentの扱い
Larry told Peter re: a damaging document in Jones (依頼者)File = would be very helpful to Smith’s(相手方) case
Larry knows the doc has not been produced in discovery.
The doc falls into a class of papers that have been requested by Smith (相手方)
Larry knows of no basis to refuse the production of the doc.
Peter told Larry to interpose hearsay, trade secrets, and overbreadth objections and not to produce the doc.

▶ここまで丁寧に書かれたら、結論として開示しなければならなかった文書だ、ということは誘導されていますね。問題は、義務の内容です。どういう作為・不作為が問題なのかを整理しなければなりません。
 もし第2段落の小問1と比較するなら、今回は、Arguable questionではないし、Reasonable resolutionでもないから、Larryは上司の指示があったというだけでは義務を免れない、ということがいえそうです。
▶状況としては、元々、相手方から提出を求められていた書類のグループに含まれています。ですから、開示を前提にして、非開示にするためにはそのための法令上の根拠を確認しなければなりませんでした。うっかりではありますが、まずその見落としについては義務違反があります。
 また、これはディスカバリーでしばしばあることですが、本来提出すべきであったものが開示漏れとなった場合、速やかに理由を付して追加で開示しなければなりません。これは訴訟一般における義務でもあります。その意味で、問題設定が、Ethicalに限っていないというのには理由があるのでしょう。
▶次に、その書類を提出することを拒絶する根拠がないことをLarry本人は知っているとされています。第2段落のときのようなファジーな表現ではないので、絶対に拒絶理由がないと知っているのです。だとすれば、Larry must produce the doc to Smith’s lawyer.と言えるでしょう。
▶また拒絶理由がないこと、提出義務があることを、クライアントに報告し、判断を仰ぐ必要があります。訴訟活動全般は特に法令解釈については弁護士の裁量が認められていますが、重要な判断については必ずクライアントに報告Informし、その判断を尊重しなければなりません。
▶さらに、Peterとの関係ではどうでしょうか。意見が対立していますね。Peterは、提出するなという結論で、意見は結構ですけれども、hearsay, trade secrets, overbreadthの3つを根拠としています。まず、Hearsayのような証拠能力の制限はDiscoveryには当てはまりません。それは学生でも知っているような基礎知識です。Trade secretsは場合によっては問題になりますが、そもそも開示すべき対象に含まれていて、Requestに対する回答でその旨を記載しなければならなかったし、実際No basisだと知っている以上、Larryは受け入れるわけにはいかないです。さらに、Overbreadthについても、そもそもDiscoveryの拒絶理由として含まれていない(秘匿特権とか、Workproductのようなケースに限られますよね)上に、LarryとしてはNo basis to refuseと知っているわけですから、これも受け入れられません。もはや、それらは違法な指示、あるいは控えめにいって合理的根拠のない指示なので、Larryとしては法令を遵守しなければならない義務を守る必要があります。問題文には意味があって、Peterのあげる拒絶理由1つずつが、Discoveryのルール上どういう意味を持つか、あるいは、この問題でどういう位置付けになるかは、個別に検討できれば加点事由だと思います。ただし、時間がないかも知れませんし、結局のところ、LarryがNo basisだと知っている、というところでくくられているので、個別に検討するところまでは必須ではないでしょう。
▶問題は、Peterについて何かすべきことはないかです。パートナーですから、かなり問題は深刻ですね。Peterは、もはや根拠のない、やぶれかぶれな理由をあげて、無理に指示をしてきています(そういう態度であることは、Hearsayとか色々理由としている単語そのものから、推認ができるので、できればそこは示したいですね)。
 倫理に違反し、かつそれがクライアントにおいて深刻な問題を起こす可能性があるようなケースであれば、裁判所や弁護士会に報告する必要があるのかどうか。少なくとも、ABCの同じ事務所の他のパートナーには報告・相談すべきですし、そこでPeterが意見を変更したり、案件から外れない場合は、依頼者に報告すべきでしょう。ここで守秘義務は対象の範囲外といえるのではないでしょうか。
 最終的に、違法なアクションを起こそうとしていて、それが是正されなければ、Larryは辞任しなければならないかもしれませんね。いずれにせよ、義務と言われたときには、誰に対するものなのかということ、具体的に何をする義務なのかを、ルールを覚えるときに確認しておく必要があります。
 ただし、細かいことがわからなければ、法務部・弁護士の方なら、ある程度一般的な考え方で結論が出るでしょうから、それを、あたかもRuleであるかのように記載したら良いです。論点やRuleの知識がないが、何が問題かはわかるとき、それを書かないのは避けましょう。自信があるかどうかではなく、思いついたことは、その場で文章にすることです。結論は決まっているのですから、Lawyers owe obligation to / not to do・・・と何か書いて、Here, Larry・・・と当てはめているように書けば点数がつきます。
▶この当たりまで分析したり書いていると、色々と混乱してきますし、時間も切迫してきます。なので、冒頭で書いたように、先に結論を書いておく、しかも「以上のような義務を負う」と総括するような記載をしておくことが、途中答案にならない上で重要だと思います。

<第4段落>=Job offer
最後の段落は、単に相手方事務所から、”魅力的な”ジョブオファーを受けた、ということです。もう一つ、Recentlyという時期も重要です。第3段落までの事件が生じた上でのことだと理解するのが自然です。

▶訴訟の係属中に、相手方当事者の代理をしている事務所に移籍すること自体、禁止されることではないでしょう。そこは当たり前ですが、原則として確認すべきです。小問3の問題文を確認してください。XYZのオファーに関する倫理的義務として”尊重しなければならないこと”を問われています。オファーは受けて良い前提の表現だと読み取れますよね。ただし、かなり面倒なことになるのは、簡単に理解できますし、条件を整える必要があります。それがなぜかを考えれば、Smith v Jonesの事件が係属中だということに尽きます。
▶問題は大きく2つ。1つは利益相反、もう1つは守秘義務です。
 利益相反については、仮に、LarryがABCを辞する場合、原則として、現在の事件について、直接の利害対立を生じさせることを確認しておく必要があります。そのままでは不可です。
 そこで、まず既存の訴訟事件でのJonesのRepresentationを辞する必要があります。当たり前ではありますが、Withdrawalは小さな論点です。直接的な利益相反ですから、辞任できる場合には当たるでしょう。
 なぜなら、その相手方当事者の代理人事務所に入ることは、Imputed conflictsの問題を生じさせるからです。
 Ruleの基本は、If a lawyer faces a conflict of interest, no lawyer in that lawyer’s firm may represent the client.ということです。つまり、Larryの利益相反が、新しい所属先のすべての弁護士に波及し、原則として受任不可ということです。
 ABA Ruleですと、Clientとしては、XYZに対するInformed written consentを与えることで、利益相反を解除することは可能ですが、XYZはそういう措置を講じる必要があります。Larryとしては、XYZに対して、SmithにInformed written consentを取るよう依頼するべきです。
 Californiaでも同様で、Rule 1.8.11でImputation of Prohibition Under Rules 1.8.1 to 1.8.9とあり、同様に個人のコンフリクトルールが他の事務所の弁護士全部に及ぶとされています。Californiaの場合、利益相反が例外的に認められるためには、Client からのInformed written consentだけではだめで、Written disclosureが必要だったり追加の要件があります(RPC Rule 1.7 (a)-(d))。

▶次に、辞任できたとすると、LarryにとってJonesは過去の依頼者だということになります。過去の依頼者の係属中の事件についても、依然としてConflictの問題は残るわけですが、ここでImputed conflictsの例外として、特定の弁護士と過去の依頼者とのコンフリクトで、既存訴訟について、Larryが見聞きしたり関与することが絶対にないよう、そして報酬をシェアすることのないように、シールドを貼る必要があるというのがルールです。Screeningが必要だというのは、有名な論点の1つですし、Law firmがすべきことが多いので、ある程度手短に書けるようにしておくのが望ましいでしょう。1.Timely screened from any participation of the current case, no part of the fee apportioned, written notice promptly given to any affected former client,certifications of compliance、の4点ですね。こういうところは全部完璧でなくても、十分スコアは付きます。
 ちなみに、CaliforniaのPRCでも、Rule 1.10で類似したルールが記載されています。厳密に言うと差があるのですが、そこまでをフォローするのはなかなか受験者としては厳しいと思います。

▶守秘義務については、広範な義務があります。設問もJob offerに関して、と書かれているので、新しい事務所に移籍してからのことだけではなく、できれば、Job interview(面接)のときにも、特にこの事件に関することを話さないこと、逆に、もしABCを辞める前のInterviewなら、その質問をXYZから受けないようにすることに注意が必要です。

 少しリモートな話としては、Attractive job offerというのがもし金銭面等であれば、それがSmith v Jonesの事件について不当な便益を受けることを期待してのことかどうか、予め確認しておく必要があるかもしれませんね。これは一般条項というか、Ethical obligationに違反するような環境にならないように留意すべき義務があるといえるかもしれません。

【総じての雑感】
 PRの問題としては、典型的な利益相反の問題について、associateの立場から上司あるいは移籍先との関係で少しひねった上で、検討させるものでした。論点自体は標準的なものといえると思います。
 ただし、思考過程を説明をする趣旨を含んでいるとはいえ、日本語でもこれだけのことを色々考えなければなりません。これはQ4で午後の1問目です。PRの答案は、基本的に長くなりがちです。ルールが長いし、ABAとCAを比較させるので、他の科目より時間をどうしても取られるのです。
 今回、科目が事前リリースされるという事態がありましたから、皆さんいつもよりはPRの準備に時間を当てていたでしょうけれども、この問題が決して簡単だとはいえないと思います。この問題に関する限り、PRがかなりの確率で出題される科目であるし、論点もConflict of interestsという重要かつテキストブックの最初に出てくる論点が中心なので、事案そのものが少しひねられていて、整理するのが難しかっただろうと想像しています。

 午後はEssay2問と、PTがあります。最近の傾向として、試験委員会としては、各セッションの最初に、時間のかかる問題を持ってくることが多いように思います。問題を解く順番については戦略を立てておいたほうが良いかもしれません。問題文の分析まで終われば、科目や論点はある程度予測できるので、時間がかかりそう、かからなさそうというのを見極めて、場合によって並んでいる順番とは違う順序で取り組んでいくことも検討に値すると思います。
 特に今回であれば、Essay Q5はRemediesですから、どちらかというとストレートな答案が書ける傾向にあります。一般的に分量も短めです。Q5からスタートすることも一案だと思います。
 私は、最終的には、Callを本当にざっと速読して、その上で順番を考える戦略を取っていました。得意不得意が自分なりに顕著でしたし、長くなりがちな科目があり、かつ問題文の長さである程度あてはめの時間が変わってくるので、短く終わるものを先に片付けて他を後回しにしていました。Snow ball effectは本当にあるので、時間管理に自信が持てる問題から手を付けるのは有効な戦略だと思います。
 ただし、回答する箇所を取り間違えたりしないようにする必要はありますから、要注意です(Laptop受験なら、全部をコピペできるので、最終確認のフェーズがあれば安心です)。
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